のこった もう、相撲ファンを引退しない 時代は変わり、いまや幕内上位はモンゴル人の力士が多くを占めている。それに伴い、モンゴル人力士に向かって野次(やじ)が飛んだり、「日本人」力士に盛大な拍手を送ったりする光景が目立つようになる。つまり大相撲がナショナリズムを高揚させ、「日本人」の一体感をあおるような政治空間を作りだしている。 本書で星野智幸は、相撲ファンの一人として、昨今のこうした傾向に警鐘を鳴らしている。相撲で重要なのは、国籍や民族ではなく技であると。相撲の技自体は「日本人」でなければ体得できないものではない。観衆は「日本人」力士が勝ったことに対してではなく、どの力士であろうが見事な技で勝ったことに対して拍手を送るべきなのだと本書で訴えかけている。 「スー女のみかた」などの著作がある和田靜香さんとの対談、90年代に著者が新人賞に応募した相撲小説(未公表)などを収録し、相撲に人生を託したことがあるファンには必読の書。 購入はこちら